「まとも」とか「正常」というのはいったい何を基準としているのか。
もしかしたら「おかしい」人が見ている世界がほんとうの世界なのかもしれない。
「おかしい」人と暮らしていると、
ときどきそう思う。
そしてだんだんこちらもおかしくなっていく。
数日前、テレビを見るでもなしに見ていたら、
認知症の旦那さんの介護で疲れた奥さんが
「あんなにかっこよかった人が、ゾンビみたいになってしまって」
と言っておられた。
認知症はゾンビみたいに伝染するのかもしれない。
噛みついたりしなくても、そういう脳波、そういう波動で、
こちらの「まとも」な脳を侵していくのだ。
みんながゾンビになってしまえば、
それはそれで平穏無事な世界なのかもしれない。
そしてみんな同じ経験をして、同じ景色を見て、
それがほんとうの幸せなのかもしれない。
いや、そんなはずはないが、
自然とそうなっていくものは「それが自然」だと言えることだけは確かだ。